2020年にデビュー・アルバム『A Call from My Dream』で韓国大衆音楽賞「今年の新人」部門を受賞。さらに昨年のセカンド・アルバム『Angel Interview』でも同賞のモダンロック・アルバム部門にノミネートされるなど、Meaningful Stoneは名実ともに韓国インディ・シーンを代表するシンガーソングライターだ。日本でもデビュー当初から、熱心なインディ・リスナーや韓国音楽に関心を持つ人々から着実に支持を集めている。

アコースティック・ギターを手にしたフォーク・ポップのシンガーであり、聴き手に癒しを与える天使のような存在でもあり、あるいは歪んだギターでシューゲイズやオルタナティブ・ロックを鳴らすロックスターでもある。彼女の姿はリスナーによって異なるイメージで魅力的に映ってきただろう。

そして待望の初来日公演が、いよいよ10月に実現する。多彩な魅力を一つに束ねた彼女の真の姿を体感できる、貴重な機会となるはずだ。本サイトでは公演に先立ち、ミニ・メールインタビューを実施。これまでの音楽遍歴や影響源、歌に込めたテーマや音楽性、さらにはおすすめの韓国インディ・ミュージシャンまで――彼女の心の内を覗いてみよう。

  • Meaningful Stone インタビュー 初来日を控えルーツや作品への思いを聞く

1. まずは日本の読者に自己紹介をお願いします。

こんにちは。シンガーソングライターのMeaningful Stoneです。私は人々の集合的無意識に触れるような音楽を作っています。本名は「キム・ジミン」(金志珉)ですが、その意味を解釈すると「意味を持った石」になります。私は「Meaningful Stone(韓国語の芸名も“意味のある石という意味”の「キム・トゥットル」)」と「キム・ジミン」、この二つの名前をとても気に入っています。石ひとつにも意味があるように、この世界のすべてのものには意味と役割があるように感じられるからです。

2. 音楽を始めたきっかけについて教えてください。

ヴァイオリン、ヘグム、カヤグム、サムルノリ、チェロ、ギター、ピアノなど、いろいろな楽器を習ってきました。なぜかすぐに飽きてしまう子どもでしたが、音楽をしている時間だけは本当に幸せでした。小さい頃から「大人になったら絶対に音楽をしているだろう」と思っていたんです。そして15歳のときにバンド部に入り、作曲を始めました。通っていた学校では携帯電話やパソコンの使用が禁止されていたので、夜になるとやることがなく、アコースティック・ギター一本で長い思春期を過ごしていました。その頃、聴いていたサイモン&ガーファンクルやテイラー・スウィフト、ビョーク、ザ・カーディガンズなどが私の友達になってくれました。

「ミュージシャン」というのはすごくかっこいい職業だと思っていたので、自分がその一人になれるのかずっと疑っていましたが、20歳になってからは「とにかくやってみよう」という気持ちでデモをYouTubeにアップし始めました。するとリスナーがついて、期待していた以上の反響をいただき、そのプレッシャーに押されるようにしてアルバムを発表することになりました。

3. あなたの歌詞には哲学的な表現が多い印象を受けます。影響を受けた作家や哲学者はいますか?

私の心のナンバーワンの哲学者はガウタマ・シッダールタ(ブッダ)です。宗教は持っていませんが、心が乱れるときはお釈迦様の言葉を読んだり思い出したりします。お寺で108拝をすることもありますね。(これってもう仏教と言っていいんでしょうか?笑)
西洋の哲学者では、ニーチェとカール・ユングが好きです。最近はヒョンギョン(玄鏡)という韓国の神学者でありフェミニスト哲学者を知り、掘り下げて読んでいるところです。

4. 最新作『Angel Interview』は韓国大衆音楽賞にもノミネートされるなど、高く評価されています。「天使が伝えてくれた話」を歌にしたアルバムだと伺いましたが、この作品を通してリスナーにどんなメッセージを届けたかったのでしょうか?

「愛」です。とても大きく、同時にとても些細な、その「愛」を伝えたかったんです。どう聴いてもらっても構いません。ただ、人々の日常に安らぎと愛を、そして「あなたのそばにはいつも守護天使がいるんだよ」ということをささやきたかったんです。

5. 最近は韓国でもシューゲイズ的なサウンドを取り入れるアーティストが増えているように思います。あなたにとって、歪んだギターや夢心地な音の魅力とは何でしょうか? その音を通してどんなことを表現できると思いますか?

ドリームポップが好きだった私にとって、シューゲイズはまさに「究極の夢幻」だと思います。TikTokやSNSのショート動画の影響で短い音楽や聞き取りやすい歌詞が重視される今の時代に、シューゲイズはその逆を行く、抵抗のジャンルだと思います。ギターの荒々しい音に埋もれるように囁く声は、今回のアルバム『Angel Interview』にとって必要不可欠な要素でした。天使は叫ばないですからね(笑)。

6. 今年は日本でも公開された映画『ケナは韓国が嫌いで』に出演され、俳優デビューも果たされました。主人公ケナの妹という重要な役を演じられましたが、その経験はいかがでしたか?ミュージシャンとしての活動に影響を与えることもありそうでしょうか?

映画での演技は初めてでしたが、その後すっかり演技に魅了され、短編映画に出演したり(今後公開予定)、演技の勉強も続けています。私はこれまで常に「自分自身であること」に集中してきたのですが、俳優というのは完全に他者になり、人を“騙す”ようなものだと思っていたので、最初は抵抗感がありました。
でも今では考え方が変わりました。必ずしも自分の身体で経験したことだけが「自分」になるわけではない。他者の人生を想像し、模倣し、それを自分の身体を通して表現することは、音楽と大きく違わないように感じたんです。音楽もまた、想像と模倣の領域でしょうし、演技も同じように世界をよく観察し、自分の想像を重ねてはじめて「自分」になるのだと感じます。だからこれからも演技に挑戦していきたいです。

7. 今、日本ではK-POPだけでなく、韓国のさまざまな音楽に注目が集まっています。日本の読者におすすめしたい韓国のアーティストを2組紹介していただけますか?

1組目はParannoulです。私が本当に大好きな、韓国が誇るシューゲイズ・アーティストです。そしてもうひとりはウ・ヒジュン(Woo HuiJun)です。とても生々しく、この時代の青春と女性たちを代表するような音楽だと感じています。

私を含め、韓国のインディ・ミュージシャンたちが日本の音楽シーンで、どんな反応を得られるのか本当に気になります。私が憧れるミュージシャンたちの地、日本に行けることを光栄に思っていますし、一日も早くお会いしたいです。それでは、アンニョン!

Writers

  • 山本大地

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