独自の歴史を持ち、K-POPとも絡み合いながらその影響範囲を拡大しているK-HIPHOP。ライブシリーズ「J.E.T. TOUR SERIES presented by. WON SOJU」では、盛り上がりを見せるK-HIPHOPシーンの熱を日本に直送すべく来日公演を毎月開催している。今回公演を行うHAONとlIlBOIについて、そのキャリアと音楽的な魅力をご紹介しよう。
HAON
2000年生まれのラッパー・HAON(ハオン)。中学在学中から音楽活動を始め、2017年にHIPHOPサバイバル番組『高等ラッパー2』に出演するとその哲学的なリリック、正確無比なデリバリー、会場を掌握するパフォーマンスで優勝を収めた。番組終了後にはK-HIPHOP界のゴッドファーザー・Jay Parkが設立したレーベルH1GHR MUSICと契約を交わし、一気にスターダムを駆け上がることとなる。
2018年にリリースされたミニアルバム『TRAVEL : NOAH』ではそんな彼の歯切れの良いフロウを全編通して楽しめる一枚だ。計51名(!)のラッパーが参加した約20分(!!)の楽曲「119 REMIX」、韓国大手音楽メディアdingoとH1GHR MUSICのコラボレーション楽曲「GIDDY UP」、歌手RAIN(비)が2017年にリリースした「GANG」のRemixなど、参加楽曲でも存在感を発揮している。
2024年リリースのフルアルバム『HAONOAH』ではより攻撃的なアティチュードを展開する「Pourin’」「Rabies」、Grimeビートにラップスキルが光る「BASTARD(feat. CHANGMO)」、R&Bの要素を取り入れた「Symmetry」「Smoke Again(feat. DEAN)」「Over You」など従来のHIPHOPの枠に留まらない幅広いサウンドで新たな一面を見せた。
日本でも人気の高いラッパー・Sik-Kとは前述のサバイバル番組で共演したこともあり、レーベルメイトの中でも特に親交が深い。H1GHR MUSICとの契約満了に際してSik-Kが設立したレーベル・KCに移籍すると、Sik-K、そしてGXXDとしての活動でも知られるプロデューサーvangdaleとのコラボレーションシリーズ『KCTAPE』を継続的に発表し、個人での活動とは異なるダークでフューチャリスティックな世界観を提示している。
また最近ではaespaのメンバーであるジゼルをfeat.に招きシングル「Skrr」をリリース。流麗なピアノのフレーズが印象的なビートと、夜のドライブに出かける交際寸前?な男女の関係性を描いたロマンチックで甘々なリリックがSNSやショート動画コンテンツで話題を呼んでいる。
lIlBOI
1991年生まれ。Louieと2011年にユニットGeeksを結成し活動をスタートすると、同年リリースの「Officially Missing You」、当時SISTARのメンバーとして活動していたソユをゲストに迎えた同曲のRemix「Officially Missing You, Too」、ハリムとのコラボ曲「어때」などヒットを連発。
メジャーシーンで活躍するも、「リアルなヒップホップではない」「金のことしか考えていない」などとアンダーグラウンドシーンの同業者から非難され精神を病んだこともあるという。
次第にGeeksとしての活動が落ち着きソロ活動が本格化する中、2020年に放送されたHIPHOPサバイバル番組『SHOW ME THE MONEY 9』に参加し並み居る実力者を抑え優勝。最終決戦で披露した「CREDIT」にはベテランラッパーのYUMMDA、プロデューサーとして彼と関わりのあるGIRIBOYとZion.Tが参加。盟友と共にこれまで支えてくれた人々への感謝を表現する姿が視聴者の涙を誘った。
2022年リリースのフルアルバム「Meantime」では、長年彼と協働するganguk、SUMINとのアルバム『MINISERIES』でも知られるSlomの2名をプロデューサーに迎え程良くリラックスしつつも洗練されたムードを表現。恋に落ちた時の感情を描いた「Fallin’」「If Time Could Change Us」、時間と共に変化していく愛をテーマにした「Home」「Pray(feat. Verbal Jint, Taylor & Hoody)」などが収録され、ハイクオリティでありながらも肩肘張らずに楽しめるアルバムになっている。
その親しみやすい歌声から、GeeksとしてMAMAMOO「Heeheehaheho」、SISTAR「The way you make me melt」、個人として元gugudanのキム・セジョン「Warning」へのフューチャリングやドラマOSTへの参加なども行っている。
一見すると接点の無さそうなHAONとlIlBOIの2人だが、HAONと入れ替わるようにして2024年にlIlBOIがH1GHR MUSICに移籍。人気プロデューサーユニットGroovyRoomによる楽曲「FASHO」では、T-ARA「DAY BY DAY」をサンプリングしたビートと、今回の公演にサポートアクトとして出演するWoodie Gochildを含めたH1GHRに縁のある8名のマイクリレーが楽しめる。
若くして才能を開花させ今も成長を続けるHAONと、紆余曲折を経ながらも確かな実力でその評価を固めてきたlIlBOI。そんな2人をメインアクトに迎えた公演「J.E.T. TOUR SERIES [HAON&lIlBOI] presented by. WON SOJU」は4月21日に東京・WWW X、23日に大阪・GORILLA HALLにて行われる。経歴もスタイルも異なる2人がどのような化学反応を起こすのか、是非現地で目撃して頂きたい。
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