K-POPを中心に韓国の音楽シーンに注目が集まる中、日本でも着実にリスナー層を拡大しているK-HIPHOP。近年では日本国内の大型HIPHOPフェスなどでも韓国アーティストのパフォーマンスを見る機会が増えてきているが、今回「J.E.T. TOUR SERIES presented by. WON SOJU」にて来日するASH ISLANDは、そんなK-HIPHOPシーンの中でも注目を集める存在の1人だ。

  • ASH ISLAND 韓国の“エモ・ラップ”第一人者として辿った道筋

1999年生まれのHIPHOPアーティスト・ASH ISLAND。2018年にClloud(クラウド)という名義でサバイバル番組『高等ラッパー2』に出演し、最終順位4位を獲得。フレッシュな出で立ちと多彩なフロウ、安定感のあるパフォーマンスで注目を集める。番組の放送終了後にはベテランラッパーThe QuiettとDok2が設立した「Illionaire Records」の傘下レーベルである「Ambition Musik」と契約を結び、同年ASH ISLAND名義で1stシングル「How R U」、同レーベルからCHANGMOを客演に迎えたシングル「DEADSTAR」をリリース。ASH ISLANDという名前は当時既に頭角を現していたラッパー・Beenzinoに提案されたものだという。

翌年には自身初となるフルアルバム『ASH』をリリース。リード曲「Paranoid」では、被害妄想に苛まれる苦しみをさらけ出したリリックを激しいギターのサウンドやオートチューンを施したボーカルに載せて描き出す。生と死の二択しか残されていないような、不安定で自己破壊的な精神状態を表現したこのアルバムは、繊細さも感じさせる彼のボーカルとエモ・ラップジャンルのサウンドをリスナーに知らしめる一作となった。

2ndアルバム『ISLAND』ではBeenzinoを招いたドープなTrapチューン「Grand prix」、彼が影響を受けた米ラッパーのJuice WRLDに捧げられた「Beautiful」など、COVID-19の影響で行動が制限される中、鬱屈した状況を打破するように前述のエモ・ラップを軸としつつ多様なスタイルに挑戦。
2023年リリースの3rdアルバム『ROSE』ではギターポップ「WONDER」やセンチメンタルなR&B「Rose In The Heart」、若手ラッパーChillin Homieを招いたDrillチューン「Trapped」など、ロックサウンドを軸とした作風を様々な要素と組み合わせつつラップではなく穏やかなボーカルをもって愛と別れについてのストーリーを紡いだ。

彼のK-HIPHOPシーンにおけるエモ・ラップの定着に対する貢献、そして音楽性の深化を続けてきた経歴から、2020年にKorean Hip-hop Awards「新人アーティスト賞」、2021年に Melon Music Awards「Top 10 Artists (Bonsang)」とMnet Asian Music Awards「Best HipHop & Urban Music」、2022年に第31回ソウルミュージックアワードのR&B・ヒップホップ賞を受賞している。
韓国にルーツを持ち、現在はラッパーだけでなくガールズグループHANAのプロデューサーとしても活躍するちゃんみなの楽曲「Don’t go」にfeat.アーティストとして参加。「ASH ISLANDの曲を聴いていると自分と共通しているところが多い」というちゃんみな側からのオファーにより実現したこのコラボレーション楽曲は、疾走感のある80’sシンセポップテイストのサウンドとエモーショナルな掛け合いが話題となった。

2024年6月に2度目のコラボレーションとなる楽曲「20」をリリース、そして同年7月に2人は結婚を発表した。2人の出会いや惹かれ合う過程を映画になぞらえた楽曲「OST」もリリースされており、この曲の日本語バージョンではASH ISLANDの日本語の歌唱が楽しめる。

Ambition Musikから自身が設立したレーベルMidnight Recordsへ移籍し、2025年3月には移籍後初となるアルバム『Voice Memo』をリリース。このアルバムには前述の「OST」の他、Block Bのメンバーでソロ活動でも知られるZICOを招いた「괜찮아(It’s OK)」も収録されている。東京の夜景がどこかノスタルジックな雰囲気を醸し出すMVも必見だ。

前述の通りちゃんみなとの結婚を経て、最近ではK-HIPHOPリスナー以外からも注目を集めているASH ISLAND。そんなASH ISLANDが出演する「J.E.T. TOUR SERIES presented by. WON SOJU」は、東京公演が5月27日にWWW X、大阪公演5月29日にGORILLA HALLにて行われる。ポップでありながらどこか切なく、感性に刺さるエモ・ラップサウンドを是非ライブハウスの音響で体感して頂きたい。

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  • 火気厳禁

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