ソウルのアンダーグラウンドにて、以前だとエレクトロで一括りになっていた電子音楽シーンが、テクノなどのダンスミュージックの他、IDM、アンビエント、インダストリアル、実験音楽…と、様々なジャンルに細分化され始め、一種の過渡期を迎えている。パフォーマンスを行うベニューやイベントも新たに出来始め、ソウルの電子音楽シーンの勢いは加速するばかりだ。
その勢いあるシーンの中で、際立つ感性とパフォーマンスの独自性を持つ音楽家HWI。夢幻的なサウンドに現代美術的なパフォーマンスアプローチは、華奢でありながら青い炎のような静かな力強さがある。今年に入ってシングルを2作発表、10月にはファースト・フルアルバムをリリースするなど、その躍進的な音楽活動から目を離せないHWIが、11月に待望の日本初来日公演を行う。
HWIはどんなアーティストなのか、どんな活動を行なってきたのか。これからHWIを知る日本のリスナーに向けて、8つの質問にメールで答えてくれた。
1.自己紹介を兼ねて、HWIのこれまでの活動を教えてください。
初めまして、Hwang Hwiです。HWIという名前で音楽家/映像作家として活動しています。自分の声を素材として使用し、エフェクターなどを使いながら音楽制作を行なっています。
クラブ・美術館・公演会場などで、ライブパフォーマンスや展示をはじめとする活動を行ってきました。
2019年にリリースされたファーストEP『ExtraPlex』は、ショッピングモールという素材を骨組みとし、自分の音楽スタイルを構築することになった作品です。2021年には所属しているアーティスト・コレクティブ「eobchae」のサウンドトラック・アルバム『The Decider’s Chamber』を発表しました。
昨年まではeobchaeの制作を主に行い、今年3月はペク・ナムジュン・アートセンターにて新作の映像作品「너의 전생(Your My Past Lives)」を発表しました。この展示をきっかけに、4月にはベニス・ビエンナーレにて韓国館開館30周年記念展のオープニング公演を行いました。
更に、今年はインディペンデント・音楽クルー「Bat Apt.」の一員として、コンピレーション・アルバム『Bat Apt』を今年6月にリリースしました。クルーの初代リーダーだったeAeoさんから2代目リーダーとしてお声がけいただき、9月より突如私がリーダーとして活動をしています。といっても、メール対応や外部とのやりとり、グループチャットでお知らせを流すような仕事をリーダーとして行なっている感じです。
HWIのファースト・フルアルバム『humanly possible』が10月に無事リリースされたので、次はBat Apt.のみんなと、来年どのような面白いことが出来るかなと、悩み始めようかなと思います。
2.幻想的なエレクトロ・サウンドと、ポップス感とのバランスがとても魅力的ですが、作品を作るキッカケ、影響を受けた音楽やその他作品・経験があれば教えてください。
元々、シンガーになることが夢でした。電子音楽をやりたくて始めたわけではなくて、歌を歌いたかったけどバンドを一緒にやる友達がおらず、1人でやれる音楽として電子音楽を始めた、というパターンです。
小学生の時、当時人気を博していたBoAの曲を歌った時、「あれ?私、結構歌えるんじゃない?」と思いました。音楽を深く掘り下げて聴くようになったのは高校生の時、自分も所属していたバンド部の友人に「レディオヘッドも知らないの?」と言われて刺激を受けたことをきっかけに、ロックを沢山聴くようになりました。あと、デザイン制作をサポートしてくれている仲良しのキム・ソヒ(『humanly possible』のHWIロゴを作ってくれました)が、高校時代にビョークを教えてくれたんですが、当時はまだまだ自分も音楽的な感覚が育っていなかったこともあり「この人はなんだ?なんでこんなに似たり寄ったりな曲ばかりなんだ?」って思っていました。でも、今では最も近づきたいアーティストの1人になっています。
3.HWIのライブパフォーマンスを観ると、演出や動きなどに現代美術との結びつきを感じます。実際に意識をしてパフォーマンスをしていたりするのでしょうか。また、参考にしているアーティストや作品などがあれば教えてください。
観客は、ステージに立った人の音楽だけを聴いているのではなく、その人の現存感を感じながらパフォーマンスを体験しています。少し変な話に聞こえるかもしれませんが、私のパフォーマンスの目的は、音楽を聴かせることではないんだと思っています。じっと立っていようと、水を飲んでいようと、突然逆立ちをしようと、ステージという場所は、ステージに立つ人の全ての行動がパフォーマンスの一部として、自然に認識されます。ステージは、世の中の数少ない特異的な「場所」だということを忘れないようにしています。そうすると、音楽公演でのパフォーマンスは一つの型にはまらず、より自然にチャレンジをしてみようと思えるんです。もちろん、まだ上手ではありませんが。この自分の未熟さから打開したい時は、現代美術家/音楽家のローリー・アンダーソンのパフォーマンスを比較対象としてよく思い出します。
4.自身の声をサウンドとして捉え、オルタナティブな表現を行なっていますが、曲を制作する上で大事にしているポイントなどありますか。
何よりも歌を歌うことが最も大切です。
5.イ・ランやキム・ハンジュとの曲も話題です。どのような経緯があって、このような作品が完成したのでしょうか。製作中、印象に残ったことがあれば教えてください。
イ・ラン氏は『あなたの前世』MV撮影の時、現場でフィーチャリングの相談をして、その場で快くOKしてくださいました。『あなたの前世』と共にリリースされた『Prologue』という曲はナレーションを読む声が必要だったのですが、自分の声だとどこかしっくりこなくて。でも、イ・ランさんの淡白で涼しい声なら、望むトーンのサウンドを作ることができると思いました。 また、イ・ランさんは私たちの世代で唯一の民衆歌手でもあるので、必ず声を借りたいなという思いでした。自分の作業室にて、私の隣の席にイ・ランさんが座り、レコーディングを行いました。まだ肌寒い時期だったので、私が飲んでいた鼻炎薬を渡した記憶があります。
キム・ハンジュ氏には、「いつか、あなたにフィーチャリングをお願いする」という話を以前からしてきました。 それがちょうど今年、『humanly possible』という曲を作ることになり、「今だ!まさに今、ハンジュさんにフィーチャリングを任せなければならない」と判断して連絡しました。 ハンジュさんとの作業は完全にオンラインでのやり取りでした。 私が作曲データを送って、ハンジュさんがそれを元に作業する感じです。 そのため、ハンジュさんが最初のデータを送ってきた時、かなり慌てた記憶があります。 ドラムのパターンが完全に変わっていて、「原曲がそんなに気に入らなかったのかな…?」と思いました。 調べてみたら、作曲データの中にドラムトラックだけ前に引っ張られてタイミングが間違って入っていたんです。でもそれはそれで魅力があったので、イントロの部分にタイミングが変わったドラムをこっそり残しておきました。
6.ライブを行う時にこだわっているポイントはありますか?
その時々で、色々なことに気を使ったり、あえて気を使わなかったりです。ポイントとしては「パフォーマンスというものは、こんなにも人為的行為で、どのように自然さを演出するものなのか」ということを考えていますね。
7.HWIさんのおすすめの韓国の服のブランドや文化的な場所はありますか?
HALOMINIUMです。最近は日本でもよく紹介されているブランドだと思います。ファッションにそれほど関心もなく、服もうまく着こなせないのですが、たまにお洒落したい時、ステージ衣装が必要な時はHALOMINIUMの服を着ると、なんだかパーフェクトな感じがします。でも、何よりも重要なのは、HALOMINIUMはお洒落でありながら、楽な着心地と実用性を裏切らない。私が考える、ファッションの美徳を完璧に具現化するブランドが、HALOMINIUMだと思います。
HALOMINIUM instagram
https://www.instagram.com/halominium/
8.11月に日本で初ライブを行いますが、待っているファンの皆さんに一言お願いいたします。
Duolingで日本語の勉強をしています。“教科書を見せてください”的な言葉を学んでいますが、実際にどれほど役立つか分かりません…ですが、まずは東京で会いましょう!
HWI来日公演『umm edition』
2024年11月17日(日) open/start 17:00
TimeOut Cafe&Dinner
entrance:2,500(+2drink)
LIVE:
HWI
Wona
Oni
RYOKO2000
DJ:
Mount XLR
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川辺素
supported by KDDI
http://kddi-l.jp/EhS
《公演問い合わせ先》
TimeOut Cafe&Dinner
https://www.timeoutcafe.jp/
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HWI プロフィールはこちら
Writers
- 内畑美里