クリアーな質感ながらソウルフルな印象も与える独自の歌声を、R&Bやジャズ、エレクトロサウンドに溶け込ませる注目のアーティスト・Dopein(도핀:ドピン)。日本でのライブを終え、新曲をリリースしたばかりの彼女にメールインタビューを敢行。自身の音楽的ルーツから日本でのライブの感想、そして今後の抱負までをじっくり伺った。

Dopein プロフィール
1994年9月15日生まれ。2014年頃からSoundCloud上に音源を発表し、2018年シングル「Sorry my phone」でデビュー。2024年にK-POPアーティストのMVも数多く手掛ける映像制作/アーティストマネジメント企業ORB HAUS、アメリカを拠点とするグローバル音楽流通会社The Orchardと契約を結び、洗練された楽曲とクオリティの高いヴィジュアルイメージで注目を集めている。また外国語大学で英語を学んだ経歴から、その実力を活かしてビルボード・コリアでのインタビューや英語声優としての活動も行っている。


 
1.アーティストとして活動を始めたきっかけを教えて下さい。

幼い頃から、テレビを見て歌手に憧れていました。 ですが両親から反対されていて、どうすれば歌手になれるのかも知らなかったので、私が目指す道ではないと思って一生懸命勉強しました。外国語を勉強することが好きで英語専攻で大学に入ることになり、新入生歓迎会の時ブラックミュージックのサークルの公演を見て取り憑かれたようにそこへ加入しました。そこでSoundCloudや音楽コミュニティを通じて活動していたLim Haeumという友達と知り合い、初めて直接録音もするようになりました。 彼の勧めで私のストーリーと声を盛り込んだ歌を作ってSoundCloudにアップロードし、2018年に初めて正式に音源をリリースして活動を始めました。

2.ご自身の音楽性に影響を与えたアーティストは?

私はいつも音楽に恋をしていました。 幼い頃からChristina Aguilera, Britney Spears, Alicia Keys, Beyoncé, Avril Lavigne, Rihanna, Maroon 5, Eminemなど何でも聞いていました。 サークルに初めて入って多様なアーティストを知り、その中でKehlaniのミックステープ『Could 19』を聴いて初めて「自分の歌を作りたい」と思いました。 今は当時から私の生活や考え、環境が変わってCleosol, Jorja Smith, Rutiなどイギリスの女性アーティストをたくさん聴いています。

3.前作EP『Trick』と最新EP『Circles』を聴き比べると作風が少し変わっている印象があります。曲やアルバムのテーマ、用いるサウンドはどのように決めているのでしょうか。

むしろ、私のキャリアで一番毛色の違うアルバムが『Trick』なのかもしれません。 制作しながら好きだったりその時よく聴いている音楽に影響を受けるのですが、その時は楽しくてダンサブルな電子音楽をベースにした言いたいことを率直に盛り込めるラップの曲をたくさん聴いていた気がします。また、R&Bという1つのジャンルに制限されたくないし、クラブでもライブ出来る歌を作りたいとも思っていました。 そんな考えから、SKOPEという友達の音楽のスタイルを信じて一緒に作ったアルバムです。実際に韓国の影響力のあるクラブsoapのプレイリストに入って再生回数が伸びたりもしました。

しかし、その後も音楽を経験して私のルーツにはボーカルの部分が強くあるということが分かってきて、メロディーと編曲的な部分でも多くの試みが出来るということを知りました。 様々なジャンルに挑戦してみて、その中で本当の自分の色を見つけていく過程のアルバムだったと思います。私の最初のEP『L’iver』を聞いてみると、むしろ『Circles』と一番似ていると感じられるでしょう。 私が得意なこと、やりたいことを、長い時間色んな経験をしてより鮮明に分かるようになった気分です。

その当時の私の中で本当に印象深い瞬間を噛みしめながら、テーマに肉付けをしていくように制作を進めます。 愛がテーマになることもあるし、別れになるかもしれないし、友達との話になるかもしれません。そのテーマができたら、そのテーマを最も表現出来る細かな背景、情景を探していきます。その情景の中に私の個人的な話を盛り込んでいきます。1つのテーマをもとに、どんな感情と雰囲気を盛り込みたいのかを悩み、プロデューサーの方と足す音、引く音を決めていきます。

4.小説や映画など、音楽以外のものからインスピレーションを受けることはありますか?

映画が大好きです。 幼い頃はすごく読書好きでした。 (今は本はあまり読みません 笑)
実際、人は生きていく中で、ほとんど皆が共通して経験するような過程があると思います。 その中で数多くの感情を経験しますが、映画はある瞬間の私の感情と、ある場面を長く引き伸ばしたり、早回しで経験させたりして人々に共感を与えるのだと思います。 自分の音楽も映画と似ていると感じます。 私の個人的な感情の一部にメロディーとサウンドをつけて、その感情に入り込んで描写し、人々に共感出来るように、関心を持ってもらえるように作品を作る。 だから映画が大好きです。
また、暗いのに明るいソウルの夜。うるさいけど静かになる夜明けの時間からインスピレーションを得ているかもしれません。

5.制作中や仕事の合間など、気分転換したい時に何をしますか?

スクーターに乗るのが好きですね。涼しい風に吹かれると解放感を感じます。 夜明けに車が多くない時、1人でドライブするととても幸せです。
旅行に行くのも好きですが、荷物をたくさん用意しなければならないちゃんとした旅行よりは気軽に行ける国内旅行が好きです。 清州(チョンジュ)や江陵(カンヌン)、東海市(トンヘ)のように誰も私を気にしないようなところに行ってご飯を食べたり、何より電車や高速バスのチケットを買って移動する時間もわくわくします。

6.コラボしたいアーティスト、シンパシーを感じるアーティストはいますか?(韓国、韓国以外で)

Crushさんが大好きなので、ぜひ一緒に歌ってみたいです。 本当に繊細に感情を込めて歌う声がとても素敵だと思います。 そしてオム・ジョンファさんをすごく尊敬しています。 音楽の面だけでなく人間的にも! 私もいつまでも素敵な姿で歌いたいと思います。
海外のアーティストではBillie Eilishです。Crushさんと同じように声の中に感情をうまく溶け込ませるアーティストだと思います。私は歌詞もとても重要だと考えていますが、成長していく人間としての悩みや忍耐を感じさせるアーティストだと思うのでいつか一緒に作業してみたいです。

7.ORB HAUSと組んでから、視覚的な表現にもより力を入れていますね。特に「Circle」のショートフィルムは、様々な欲と衝動が絡み合う一晩の様子を静謐かつ劇的に描いた素晴らしい作品です。こうしたビジュアルについてはどのようなプロセスで制作されているのでしょうか?

1人で音楽をしながら、どうしてもすべての部分で私が責任を負わなければなりませんでした。その中でも1番難しい部分が視覚的な部分でした。今はORB HAUSに出会って良いシナジーが生まれていると思います。
私にとって曲の歌詞とテーマがとても重要なので、伝えたい部分について明確に説明して、デモを聴かせます。 ディレクターのリナさんが私のデモを聞いて思いつくアイデアを提示してくださって、お互いのイメージをすり合わせて具体化していきます。 このような過程を経てお互いの趣向に対する信頼感とリスペクトが生まれ、視覚的な部分についても信じられるようになりました。私のこだわりと信念をよく受け入れ、良い方向に導いてくれていると思います。

8.先日の「Drippin’」は短いながらとてもハッピーなヴァイヴが感じられる良いライブでした。ライブの感想をお願いします。

とても幸せでした。2025年度の目標の一つが日本公演でしたが、実現できて嬉しかったです。 DJであり、パーティー企画者のCHEBBさんとソウルのSCR(Seoul Community Radio)で‘Drippin’のパーティーをした時に知り合いました。日本でも韓国のR&Bや音楽をたくさん愛してくださっていることを知り、不思議な経験でした。
実際に日本に来てみると、本当に韓国の文化を愛してくださる方々が多くてありがたく幸せでした。 私が日本語を上手く話せなくて悔しかったですが、むしろ韓国語で話してくださる方もいらっしゃるので、私も頑張らなきゃと思いました! もっと頻繁に公演できればいいなと思います!

9.実は日本を訪れるのが先日の公演で2回目とのことですが、日本の印象はどうですか?

初めて訪れたのは名古屋でした。幸い現地に住んでいる韓国人の友達がいて、遊園地、観光地、温泉、町のおいしい店など、様々な経験をしました。 異国的で食べ物もとてもおいしくて楽しかったです。
東京は名古屋とは全く違う雰囲気でした。ソウルと違うところはあれど、よく似ていると感じました。 今回は短い滞在だったので2つの目と耳を大きく開いてたくさんのことを吸収しようとしましたが、これからも機会があれば頻繁に遊びに行ったり、ジャズバーでジャムセッションもしてみたり、もっと大きな公演もしてみたいです。

10.先日の公演でも披露されたKIHU氏との新曲「SWEET HOME」はどんな曲ですか?

今回のシングル「Sweet Home」は、KIHUさんとのプロジェクトシングルで、ミニマルで涼しい感じのハウストラックです。 日本で初めて、ライブで披露しました。Dopeinとして引き続きR&BとSoulジャンルの音楽をこれからもリリースする予定ですが、私が色々なジャンルの音楽を聴いて楽しむので、プロデューサーの方々と一緒にユニークな音楽を作ってお聴かせしたいです。

11.他のアーティストと共同で楽曲を制作する上で楽しいこと、興味深いことや記憶に残っているエピソードがあれば教えて下さい。

今回のEP『Circle』に収録されている「Lick」という曲があります。私は普通、曲を作る時に一人で完結させようとするタイプで、1人で完成した部分に勝るほどぴったりのフィーチャリングが思い浮かんだら、他のアーティストにフィーチャリングをお願いします。 「Lick」には何か甘草(注:漢方に用いられる生薬の一種。独特の甘みがある)のような役割をしてくれる人が必要だという気がして、本当にたくさんの名前が浮かんだのですがぴったり合う人を探すために下手に連絡ができずにいました。
アルバム作業を終えなければならない締め切りが近付く中、ふと思い浮かんだのがZENE THE ZILLAでした。 本当に時間が無く、彼が受けてくれなければ1人の曲として出そうと思ったんですが、数時間でパッとバースを作ってくれ、歌にとても調和する仕上がりでした。 とても感謝していて、記憶に残っているエピソードです。

12.あなたの音楽をまだ知らない人に、一番最初に聴いてほしい1曲はどれですか?

1番好きな歌はいつも変わりますが、私は「cameo」という歌が大好きです。 夜明けと悲しさ、愛、別れ、私がよく考えることが最も多く込められていて、ボーカルにも魅力を感じてもらえる曲だと思います。

13.今後の目標や野望をお聞かせください。

私の曲の歌詞の多くが英語で書かれているので、海外のリスナーの方々にも直接歌をお聞かせしたいです。ライブに力を入れているので、感情を直接伝えられる機会をたくさん作りたいです!

14.最後に、このインタビューを読んでいる人に向けてメッセージをお願いします!

皆が経験する人生の過程と、感情の中で特に輝く瞬間を盛り込んで音楽にしています。 興味深く聴いて、また共感して頂いて、こんな考えをする人は誰なんだろうと私に興味を持ってくだされば幸いです。 ありがとうございました!

【Dopein】
Instagram
https://www.instagram.com/dopeinlee/

YouTube
https://www.youtube.com/@Dopein

SoundCloud
https://soundcloud.com/dopeinlee

取材・編集 火気厳禁
翻訳監修 YON

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